西伊豆ルート2014



m_nishiizu
nishiizulineup


都内の会社に勤める同僚同士。自転車は好きだが、求める部分はそれぞれ違う。
今回の旅では都会の喧騒を離れ、癒しを求めて非日常への脱出を計画。

・ショーン
使用バイク:Kona Explosif
好きな食べ物:キャンプの焼マシュマロ

・トール
使用バイク:Surly Krampus
自転車の魅力:遊び方いっぱい!

・シン
使用バイク:Surly Cross Check
バイクパッキングの魅力:グループなら結束が、ソロなら経験値が、それぞれ高まるところ



「男たるもの、西へ行くべし!ってね。」

「Blackburn Out There」の序章となる感動的なムービーで、コロラドに移り住み、グレート・ディバイドを完走したニックはこう語っていた。

そう、男たるもの、西へ行くべし。

その時から、今回のルートは決まっていた。奥深い山々が切り立った崖となり、駿河湾へと注ぎ込む西伊豆にルートを設定したのは良かったが、出発一週間前、とはいえ彼らは気を揉んでいた。 過去数十年で最大とも騒がれた台風が、もうじき日本に上陸しようとしていたからだ。 結局、彼ら3人の強い願いに押されるように、その週末が訪れる前に台風は北へと消えていった。 こうして、東京の会社でサラリーマンとして働く3人の、新しいアドベンチャートリップが始まる。


都心から特急に乗ること2時間弱、彼らは修善寺駅に降り立った。 ここを出発地点とし、標高900mほどの峠まで登ったあとは海まで一気に下り、海岸沿いを走ってキャンプ場で一泊、翌日は再び山中を抜けて修善寺へと戻る、約100kmのループが今回のルートだ。台風一過により好天が予想されたが、実際は酷暑となり、メンバーに不安がよぎる。だが、やるしかない。


出発してすぐの、修善寺の温泉街を散策しているときは余裕を見せたものの、単調な登りと照りつける日差し、さらに湿った重い空気が彼らから体力を徐々に奪っていく。 最低限の荷物でも重過ぎたのか、バイクが不調となり、修理を強いられるメンバーが現れた。だがそこはグループライド、仲間が困れば休憩も兼ねて、停まって手を差し伸べる。応急処置も済み、週末の走り屋たちに道を譲りながら、再び峠頂上を目指した。 次第に一つの横並びが、縦に散らばり始めた。 普段から定期的に乗り込んでいる彼らだが、この暑さと荷物の多さでは、徐々にペースにばらつきが出始めるのも無理はなかった。熊笹が一帯を覆う山頂付近は景色こそ良いが、まだまだ続く登りを見せつけられ、ため息が漏れた。 頂上目前にして、遂に一人の足がつった。苦痛に顔を歪めつつも、あと少しを登りきれば暫くは下りだと己に言い聞かせ、少しずつ前進する。



そう、軽いギアを幾度となく回せば、登っている最中は永遠と感じられたとしても、その足を止めない限り必ず頂上には辿り着けるのだ。こうして3人は峠の頂上で再開し、今までの苦労は嘘の様に、海を目指して軽快に下り始めた。


悔しい程あっという間に海沿いまで下りてきた彼らは、ここで昼食休憩を挟む。 海産物が有名な西伊豆、彼らは皆、太刀魚の天丼を注文。登りの辛さを語り合いながらの燃料補給のあと、一行はキャンプ場を目指した。


海岸沿いと言っても平坦な道は少なく、アップダウンが続く。交通量も多く、ただでさえ集中力が切れかけている中、しっかりと前を見据えて足を回さなければならない。途中で温泉に立ち寄り、半日分の汗と疲れをすべて洗い流す。

温泉を出た所で、メンバーの一人が惜しむらくもこのアドベンチャーを去る。 一人の男として、いつの時代にも、旅を捨てでも家族の元に戻らねばならぬ理由があるのだ。


残された2名、普段の関係からすれば温厚な上司と血気盛んな部下のその2名は、一足早い同僚の離脱を惜しみながらも、彼の分も楽しもうと誓った。 市場で晩飯の食材を買い込み、一路キャンプ場へ。到着するなりさっさと着替えてテントを設営。手慣れたものである。まだ日は堕ちていない。もう、明日の朝まで、自転車には乗らなくて良いのだ。受付で七輪を借り、先ほど手に入れたばかりの干物を味わう。その手にはしっかりと、ビールが握られていた。

明日を乗り切る為にしっかりと食べたあとは、たき火を囲いながらお互いのとっておきのストーリーを語り合い、親睦を深めた。普段は掴み合いの喧嘩も辞さない上司と部下の関係ではあるが、苦労と楽しさを供にした2人に、その日常の姿はもう見られなかった。ここでの2人は、何でも揃う社会から何も無い山中へと身を置いたただのパートナー。この関係は、少なくとも旅が終わるまで続くことだろう。たっぷりと喋ったあと、彼らはテントに潜り込み、長い一日を終えた。

翌朝。


辺りは霧に包まれ、小雨が降っていた。眠い目を擦りながら、また新たなアドベンチャーに向けて、彼らはキャンプ場をあとにした。今日も昨日とさほど変わらないほど登らなければならない。それもフレッシュな状態でスタートした昨日とは違い、疲労がたっぷり残っている状態で。だが彼らは足取りを緩めなかった。ペースは遅いとはいえ、着実に前へ進んだ。時折、橋を見つけては向こう側を探索する余裕まで見せた。そして頂上に到着。あとは修善寺駅までひたすら下るのみ。ここでも彼らは、あっという間にコーナーの向こう側へと消えて行った。


たった一日半前に出発した駅に戻ってきた彼らだが、旅の時間はそれ以上に長く感じた。手際良く自転車をパックし、駅でお土産を買い込んだあと、電車に再び乗り込んで、複雑な社会へと彼らは戻って行った。工夫次第では、非日常は少しばかりの計画としっかりした装備、あとはやる気次第で簡単に体験できることがわかったのは、彼らにとって大きな収穫だった。きっと彼らは、また旅に出る。



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